寸景随想#28 あの頃の気持ちは音楽と一緒に残っていた

寸景随想-コラム-

最近、ふとしたきっかけで昔夢中になっていたものを思い出した。

子どもの頃に見ていたドラマ。そのドラマを彩っていた主題歌や挿入歌。そして、それを歌っていた歌手たち。普段は思い出すこともなく、遠い記憶の引き出しの奥にしまい込まれていたはずなのに、一つの曲を耳にした瞬間、それらが一気によみがえったのである。

不思議なことに、思い出されたのは曲だけではなかった。

その当時の時代の空気、テレビを見ていた部屋の雰囲気、自分が何を考えながら毎日を過ごしていたのか、さらにはその頃に抱いていた感情までもが鮮明によみがえってきたのだ。

音楽には、記憶の扉を開く不思議な力がある。

今回、そのきっかけとなったのは、子どもの頃に熱中して見ていたアニメ「キテレツ大百科」のエンディングテーマとして使われていた坂上香織さんの『レースのカーディガン』だった。

当時の私はまだ幼く、アニメそのものを楽しんで見ていた年頃だった。しかし今振り返ると、この曲は不思議なくらい強く記憶に残っている。

おそらく私は、その頃初めて「お姉さん」ではなく、一人の女性として坂上香織さんを意識したのだと思う。歌番組などで見かける姿にどこか大人の雰囲気を感じていたことを、ぼんやりと覚えている。

そして、その記憶はさらに別の作品へとつながっていった。

それが坂上香織さんが出演されていたドラマ『太陽の犬』だった。

内容を細かく説明できるほど覚えているわけではない。しかし、母親と一緒に毎週楽しみに見ていたことだけは、今でもはっきりと記憶に残っている。

人間と犬との絆を描いた物語だった。どこか切なく、それでいて温かい。人間以上にまっすぐな想いを持つ動物たちの姿に、幼いながらも強く心を動かされていたのだと思う。そして、このドラマのオープニングテーマだったのが、野崎沙穂さんの『眠れぬ夜を過ぎて』である。

野崎沙穂さんの澄んだ歌声とドラマの世界観は見事に重なり合い、物語の始まりを印象的に彩っていた。その旋律を耳にすると、ドラマのワンシーンや登場人物たちの姿だけではなく、その頃の自分自身の気持ちまでもが不思議なほど鮮明によみがえってくる。

大人になると、日々新しい情報が次々と頭に入ってくる。その中で、昔の記憶は少しずつ奥へと押し込まれていく。

私もここ数年、このドラマや坂上香織さん、野崎沙穂さんのことをほとんど思い出すことなく過ごしていた。しかし今回、その眠っていた記憶を呼び覚ましてくれたのがYouTubeだった。

偶然見つけた動画から流れてきた数分間の音楽が、何十年もの時間を飛び越え、一瞬で少年時代の私を連れ戻してくれたのである。

人は年齢を重ねるほど、未来よりも過去を振り返る時間が少しずつ増えていくのかもしれない。懐かしい曲を聴くたびに、その時代にしか存在しなかった空気や感情がよみがえり、忘れていた大切なものを思い出させてくれる。

だから私は、この記憶を忘れたくないと思った。

疲れたとき、少し立ち止まりたくなったとき、またこの曲を聴いてみたい。そして、あの頃の自分に会いに行きたい。

もしこの記事を読んでくださった方の中に、『キテレツ大百科』や『太陽の犬』、そして坂上香織さんや野崎沙穂さんを知っている方がいたなら、ぜひ同じように当時の記憶をたどってみてほしい。

きっとその曲の向こう側には、忘れていた自分自身が待っているはずだから。

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