近年、レトロゲームブームが再び熱を帯びている。ファミコンやスーパーファミコン、ゲームボーイ、メガドライブ、PCエンジン。。。かつて子どもたちの憧れだったゲーム機が、今なお人々の心を捉えて離さない。幼い頃に手にできなかった世代が大人となり、ようやく当時の欲求を満たそうとしているのだろう。
この潮流に火をつけたのは、間違いなくYouTubeの存在である。往年の名作を実況する動画はもちろん、近年では「レトロゲーム福袋の開封動画」も人気を集めている。袋から取り出される1本1本に視聴者は歓声をあげ、思いがけないソフトとの再会に胸を高鳴らせる。その光景を目にすることで、忘れかけていた感情が刺激され、さらにファン層は広がっていった。
既に生産を終えたこれらのソフトは市場在庫のみ。年を経るごとに希少価値は高まり、価格は高騰している。それでも30年以上の時を経てもなお遊ばれ続けるのは、当時の開発者たちの知恵と情熱の賜物に他ならない。
私自身もこのブームに心を動かされた1人である。週末になると、レトロゲームを扱うショップを巡るのが楽しみになった。もちろん、ネットのフリマでも多くのソフトが売られているが、私はあえて店舗を訪れる。なぜなら、私が求めているのは「ゲームそのもの」だけではないからだ。
長い年月の中で記憶から消えかけていた1本と店頭で再会すると、心に火花が散るような感覚を覚える。「ああ、このゲームをよく遊んだな」、「友人の家で夜更けまで夢中になったな」。。。そんな記憶が押し寄せ、日常の疲れも吹き飛んでしまう。50歳を迎えた今、日常の中でこれほど心が躍る瞬間はそう多くはない。
あるYouTuberが語っていた。「店頭で出会うレトロゲームは一期一会。次はもうない。欲しいと思ったなら、その時を逃してはいけない」と。その言葉はまさに真実である。私にとってレトロゲーム収集とは、コンプリートを目指すことではなく、忘れていた記憶を呼び覚ます行為であり、日々に心のときめきを取り戻す旅でもある。
願わくば、家の片隅に眠っている古いソフトがあれば、中古ショップに持ち込んでほしい。もしかすると信じられない価値がついているかもしれないし、なにより、その一本を待ち望む誰かがいるのだ。
レトロゲームとは、単なる「過去の遊び」ではない。手に取った瞬間に、忘れていた笑い声や友人の顔、あの時代の空気までもを呼び戻してくれる、まさに“記憶を開く鍵”なのである。